仕事でよく弦交換をしますが、そのときに私が気を付けていることを解説します。
①1本ずつ交換する
駒が倒れないように1本ずつ交換します。
順番は人によってそれぞれのようで、G→E→D→Aのように外側から交換する人が多いように思いますが、内側(D線、A線)から交換する人もいます。
私は左から順番にG→D→A→Eで交換することが多いと思いますが、特に意味はありません。
どの順番でも2番線(バイオリンだとA線)のペグ穴に弦を通すのが狭くてやりにくいですね。
②駒とナットの糸道に鉛筆を塗る
弦を外した時についでに糸道にろう、または鉛筆を塗り、滑りをよくします。
糸道とは駒とナットの弦が乗っているところです。チューニングの度に弦が伸び縮みするので、滑りをよくしておかないと次のようなリスクがあります。
・駒がチューニングのたびに弦に引っ張られて傾いたり曲がったりする。(気付かずにいると駒が倒れ、割れてしまうことも!)
・駒の糸道の溝が深くなって、弦が駒に埋まってくる。
(弦と駒の接触面積が増えて摩擦が大きくなり、駒がさらに傾きやすくなる)
・ナットの糸道の溝が深くなり、弦が指板に当たってしまい、雑音の原因になる。
ペグをまわすとパキパキ音がすることがありますが、駒・ナットの糸道の滑りが悪いことが原因の場合も多いです。
③駒が傾かないようにする
駒は楽器に対して垂直に立っているのが正しい状態と言われています。下写真。
チューニングすると駒が傾いてくるので、その都度駒を起こさないといけません。(鉛筆やろうを塗って滑りをよくしても、駒が傾いたり曲がったりする場合は駒交換など別の修理が必要です)
④弦の巻き方(抜けにくい、緩みにくい)
ペグで弦を巻いていくわけですが、弦が抜けにくい巻き方があります(下3枚写真)。弦をペグ穴に通して、ペグの持ち手側に弦を寄せて半周回し(写真左)、弦を逆側に寄せて1周ペグを回して(写真中央)、もう一度ペグの持ち手側に弦を寄せながらペグを回し(写真右)クロスさせて巻いていきます。こうすると抜けにくくなります。
ペグが緩みにくくなる巻き方のこつもあります(下写真)。弦を巻いてい時にペグボックスの壁に沿わせて巻いたほうが(写真右)摩擦が増えて緩みにくくなります。ペグが固く、重くなるといってもいいでしょう。
弦の巻き方はいくつかやり方がありますので、こだわらなくてもいいと思います。上記は巻き方の一つの例です。
※この巻き方をしても緩みやすい(ペグをぎゅうぎゅう押し込まないと緩んでしまう)場合は修理が必要です
⑤ペグの向きの調整
アジャスターでチューニングする場合は気にしなくてもいいですが、ペグの向きは重要です。チェロの場合は気にしなくていいですが、バイオリン、ビオラの場合は気にしています。
最終的に写真左のような向きになっているとペグを回しやすいと思いますが、新品の弦の場合は弦が伸びるのを考慮して、写真右の向きにしています。最初はペグ間の距離が短く手がペグにあたって回しにくいですが、数日経てば左写真のような向きになっているはずです。
以上のようなことを気にしながら弦交換をしています。
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